私の履歴書(塾講その3)


 算数の特殊算を連立方程式で解くようにしましたが、勿論ただそればかりやっていた訳ではありません。

計算練習や図形の問題、また基本問題の反復練習から、入試演習まで入試対策として必要と思われることは当然やりましたが、入試にとらわれずいろいろ考えることに時間をかけたいというのが自分の方針でした。というか、そのほうが面白かっただけかも(笑)

生徒が優秀でこちらの問いかけにどんどん自分の考えを言ってくるので、とても面白かった記憶があります。とんでもない発想があるのも楽しめましたが、子供でもここまで考えられるのかと驚かされたことは少なくありません。

あるとき、入試問題でこんな問題に出会いました。

http://sukishin.com/kakonikki/sanheihou2.html

この問題自体はよくある問題ですし、生徒もすぐに出来たので、そこで、

「3cm、4cm、5cmで直角三角形になったとかいてあるけど、本当に直角なのかな?もしかしたら89度位なんだけど、90度っていってるのかなあ?」

そういう問題を提起して、いろいろある証明のうち相似を用いた三平方の定理を証明しました。他の証明を考えさせようと狙っていたのですが、ひとりの生徒が、

「なら、直角になる三角形はまだ他にもあるよね」

ってことになり、そこで私が知っている比をいくつか紹介しました。

「(3,4,5)、(5,12,13)、(7,24,25)・・・」

実際武蔵中学の問題にはこういったいわゆる「ピタゴラスナンバーを3組あげよ」という問題が出題されていました。

ところが背理法の議論の練習として素数が無限にあるのか有限なのかということを考えさせたことがあるせいか、

「ピタゴラスナンバーの組み合わせは有限?無限?」

と生徒が聞いてきました。私はそれまで考えたことはありませんでした。考えたことがなかったので、別に答を出すというほどの気持ちはなくて、なんとなく

「みんなはどう思う?」

と聞いてみました。無限だとか有限だとかしばらく、わいわい訳の分からない子供達の言い分を聞いていたところ、ある生徒が次のような解答を考えました。なぜ小学生が因数分解(まだその時期には因数分解は教えてませんでした)を・・・ということはありますが、とくに因数分解を意識していたわけではなく、式の展開で和と差の積が平方の差になることをみつけたのだと思います。実際その子は3桁と3桁の数の積を暗算で出してしまうというほど計算の得意な子でした。

しかし、その部分ではなくて、とにかくその発想にはびっくりしました。

http://sukishin.com/kakonikki/sanheihou.html

なるほど、いわれれば簡単ですが、それに気がつくのがスゴイですよねえ。

勿論この議論では3組の数が互いに素かどうかということがやや議論不足ですが、

「aとbの差が1なので互いに素は明らかなんだけど。」

とヒントを出すとみんなすぐに納得できたようです。この理由が理解できれば、ユークリッドの互除法の原理も理解できたようなものですが、そのときはそんなことより、ピタゴラス数の無限が証明できて満足だったのでそこで打ち止め。

とにかく算数の問題には発展させるとすごく高度な内容が含まれていることが多く、考えさせる材料には事欠きませんでした。

ところで担当していたのは算数ですが、理科にも興味があったので、子供を自分のアパートに呼んで理科の実験(?)に挑戦したことも何度かあります。なかでもよく覚えているのは 「ドライアイスによるフナの冷凍実験」でしょうか。

フナをドライアイスで冷凍し、しばらく空気中に放置した後、水に戻したら蘇生するか?という実験です。

これは是非紹介したいのですが、長くなるのでまた次の機会に・・・

(続きます・・・)